体験する娯楽

こんばんは。

今日は、国立文楽劇場、6月文楽鑑賞教室
午後の部観劇。

*団子売
*解説
*ひらかな盛衰記

団子売は咲甫大夫の声がいいなぁと改めて思った。

相子大夫の大きな通る声が好きだったが(客観的な感想って難しい)、団子売で続けて聴くと咲甫大夫の声に「お!」と反応している私がいた。

伽羅先代萩』の時もお二人は同じ段だったが、八汐と沖の井だったので、それぞれにうまいなぁと感じていた。

今回、なぜこのように感じたのかは分からない。

相子大夫の掛乞の段はよかった。

団子売の杵造が勘市さん。
団扇を持って登場した際、妹背山の米屋をすぐに思い出した(笑)。

お臼はよかった。でも玉勢さんだからなのか、あたしが女方が好きだからなのかは分からない。
ただ、いいなぁと思った。



解説は簑紫郎さん。
そのあと左遣いに玉翔さん、足遣いに簑次さん登場。

今日は中学生がたくさん入っていた。昨年は気付かなかったけど。

なので自然に笑いがたくさん起きていた。

体験ももちろん中学生の代表が。

あ、だから昨年は「体験したい人?」と呼びかけていたので、学生さんは入っていなかったのではないかしら。

体験を見て、改めて文楽人形の三人遣いは素晴らしい芸術だと思う。

今日はやっと「左手を出す」という主遣いからの合図が理解できた。

右手はすぐ出る。でも左手が出るまでに間があることに気が付いた。

「嬉しい」の表現も、首と肩を使って、さらに感情を込めて、という解説がわかりやすかった。

右手と左手を合わすのも、主遣いと左遣いが気持ちを盛り上げて、とも言っていた。

三人で動かしてこその芸術の神髄が、また少しわかったように思う。



そして、ひらかな盛衰記は感動した。

でもまずは無料のプログラムにある漫画の槌松を見て吹き出しそうになった(笑)。

自分でも想像していたが、漫画でわかりやすく書かれていて楽しめた。

権四郎も漫画のように大げさな動きをする時もあって、そういう時は物語を離れて楽しめる。



いよいよ始まった。約1ケ月ぶりの文楽は、肌にすんなり馴染むようでもあり、新鮮でもあった。

芳穂大夫に聴き惚れていた。
好きというよりは、義太夫節の語り分けに感動して震えていた。

槌松こと駒若君がかわゆかった(浄瑠璃では可愛う)。

槌松への想いを語る場面では何度も涙ぐんでいた。



そして津駒大夫、富助さん登場。
床が回った時「うきゃ〜」という気持ちだった(笑)。
アイドルに対する気持ちとは違うんだが、楽しみ過ぎて、うきゃ〜のあとにはハートマークが付くぐらい津駒大夫が好き(笑)。

富助さんも妹背山の背山が忘れられず、すっかり大ファン。
今日も感動した。

「ヲクリ」の重たい始まりだったが、およしが権四郎の肩をたたき、いい場面だった。

そして清十郎さんのお筆さん登場。めいいっぱい拍手をした。

義太夫節がいいところだなぁとわかっていたが、清十郎さんは外せない。

さっきの肩もみ、いい場面と思ったら…およしの悋気で権四郎いい迷惑(笑)。

博多座で見た、おみっちゃんと久作の「あっつ」の場面再来(笑)。

でも浄瑠璃にはなくて、少し見逃した。明日は見逃しません!

こういうところが、劇場に足を運んだ甲斐があるところ。

ますます文楽にハマってゆく〜。

清十郎さんが出てこられてからは、やはりお人形に注目している。

正確には清十郎さんのお人形に。

なので、さっきの肩もみの笑いの場面は清十郎さんを追いかけていて見逃した。

でも肩たたきを始める時はよく見ていた。
浄瑠璃にはない動きを始めたから。

権四郎が肩をたたき、それを見ていたおよしが、じゃあ私が揉みましょうという会話を、お人形だけでしていた。

お人形(権四郎)が三角座り?をするのが不思議で仕方がない。そして好きな動き(笑)。

明日も楽しみにしていよう。

お筆さんは浄瑠璃通り、おしとやかで、きれいだった。

私は目が離せない。

でもいよいよ槌松の話になると、ぐっと物語に引き込まれる。

槌松が亡くなったことをわかった上で見るこの段は本当に辛い…。

権四郎の、笑いと共に「忝ない」の繰り返しは切ない…。

しかもおよしと立ち代わり入れ代わり外を覗く姿は嬉しさが伝わってくるだけに悲しい…。

お筆さんの気持ちが分かる気がする。

告白の場面では三味線も大盛り上がり。大夫さんの声もお腹に届くが、三味線の大音量はさらに感動する。

およしが夢に見た槌松の話が泣ける。
作品としてうまいなぁと思う。

津駒大夫の権四郎なら何度でも聴きたいと思った。

妹背山の鱶七上使は好きな話ではなかったから。

権四郎がお酒を飲む場面も浄瑠璃にはなかった。

大津絵のくだりにいく前に、貼ってある大津絵に気づき、泣けてきた。

実際、大津絵の語りの場面ではもちろん涙ぐんだ。

権四郎がのれんの奥へ行ったと思ったら、包丁を持って戻ってきた。これにも驚いた。

このあとツケ打ちが聴こえてきたが、なんせ初見なのでどの辺が見せ場の型かさっぱりわからず、ただ聴こえてくる、というのが精一杯だった。

権四郎が樋口に抱えられる場面は思わず笑ってしまった。

お筆さんが帰って行く時きれいな動きだった。
明日も逃さず見たい。

しかも今日は近くの席から「清十郎」と声がかかった。嬉しかった。

最後まで権四郎が泣いていた姿に、また涙ぐんでしまった。



逆櫓の段は、最初ざわざわしていたが、やはり始大夫さんの大きな声が響きわたると静まり返った。

さすがだ!と思った。

そのあと場面転換でも感嘆の声が聞こえてきた。
こういうのを感じられるのも劇場ならではのこと。

浄瑠璃をぱらぱら読んで樋口が捕まるところを知ってしまったが、やはり三人を軽々とやっつける場面は、見ていて気持ちがよかった。



要望書にも書いてきたが、この続きも見たいし、槌松と駒若君が取り違えられる場面も見てみたい。

明日の文楽デーも楽しんでこようと思う。


旧暦皐月一日、腐草為螢。空氷