並木千枝の文楽散歩文楽4月公演

久しぶり!こんばんは。

国立文楽劇場、4月公演は24日まで上演中。

それぞれ二回ずつ聴いたので、やっと書きたくなってきた。



初日、
*源平布引滝
*艶容女舞衣
*碁太平記白石噺
女殺油地獄



予習は、源平布引滝だけ出来た。

出来たにもかかわらず、やはり途中から始まることに違和感を感じる。

仕方ないことではあるけれど…。

こうやってマイナスから入っても、小まんの悲痛な思いを聴き、ぐっと引き込まれる。

また実盛が優しいからそれも嬉しい。

小まんの命がけがすごく伝わってくる。



襲名披露口上、
ドキドキするね、段取りに。

開演前、藤蔵さんをお見かけしたが、「おめでとうございます」と、未だにお伝えできていない…。

う〜ん、難しい。



肘(かいな)は出てくるだけで泣けてきた。

小まんと太郎吉
小まんと育ての両親
小まんの実の父
太郎吉と育ての祖父母
太郎吉の本当の祖父
太郎吉と実盛

と親子関係の絡みがたくさん。

多ければ多いほど私は泣かされる。



文楽 = 親子の恩愛



私はこれが一番だと思っている。



物語に夢中になっていたので、源平布引滝のあと、募金活動中の竹本住大夫さんとお話させていただいた時、「瀬尾十郎詮議の段」を聴いたことをど忘れしていて自分で驚いた。

住大夫さんに伝えたいことは何だ?と自問した時、初春公演の傾城反魂香だった。

私はこの感想をお伝えしたつもりだったが、住大夫さんには源平布引滝と伝わったよう。

慌てて今日の感想をお伝えした。

あぁ情けない。

でも念願のサインをいただいて嬉しかった。

薬師寺さんのお話もさせていただいた。



何が言いたいかというと、私の場合、筋がよければ誰の語り、というのを意識していないということに気が付いた。

親子の恩愛が伝われば、客観的に誰々の語りを聴いている、という意識がなくなっていた。



それでも、傾城反魂香は住大夫さんだし、ちょいのせは咲大夫さんだし、一谷嫩軍記の相模「いいえいな」は源大夫さんだし、重の井子別れは嶋大夫さんだし、堀川猿廻しの段は津駒大夫さんだし、長吉と「善哉」は呂勢さんだし、と耳に残っているものは多い。



でも「聴く」文楽にシフトした今、ちゃんと聴こえるかどうかを私は指針にしている。



なので、入り込めなかった
初日、
艶容女舞衣
太平記白石噺

はよく寝た。

途中から始まるのは前もって分かっているけれど、舞台が始まった時に(半分は自分の責任)入り込めるかどうかが問題。

やっと9日、17日に碁太平記白石噺

16日に艶容女舞衣

をじっくり聴いた。



私なりの感じ方では、つぶつぶジュースに例えると、源平布引滝はつぶつぶ(親子の恩愛)が多いように感じる。

艶容女舞衣、碁太平記白石噺はないわけではない。少ないと感じる。



そして女殺油地獄は、はっきり言って避けていた。

でも、まぁさすがに目が覚めたのか…、始めからじっくり聴いていたら(初めて!)、親子の恩愛は少ないが、展開がおもしろかった。

まさかの般若心経が出てきたし。

住大夫さんとお写経のお話をしたあとだったので、めっちゃんこ驚いた。



与兵衛について。

三浦しをんさんは本物の涙と言う。

私も聴く前はそう思っていた。



富岡多恵子さん著
近松浄瑠璃私考
を読んだ。



ずっと考えていた。

自分の言葉で書きたいと思っていた。

今日ごーん(いがみの権太)を思い出した。

まぁでも時代が違うか…。

与兵衛は死ぬことにおびえているから、自害はできないと私は思う。

なのになぜ殺害ができるのか…と思うが。

本当に心を入れ替えたのなら、父に謝ればいい。入れ替えたことを証明しなければ伝わらない。

さらに心を入れ替えたというのなら、やはり命を懸けることやと私は思う。



心を入れ替えたかどうかが私はすごく気になる。

与兵衛は悪い奴や、と言いたいのではない。

事実を元にしているから、結果は変えられないけれど、過程を考えてしまう。



結論として私は計画犯だと思う。

すでに十貫匁近く借りているし、
‡裏問ひける

があったから。

すでにお金を借りていても、まだ足りないわけやし。

裏問いは源平布引滝の甥と同じやった。

浄瑠璃の成立は逆なんやけど、言葉の意味が源平布引滝のおかげで分かった。



「私は」やけど、お金欲しさに殺人を犯して、処刑になるまで与兵衛は治らんと感じた。

お吉のことは好きで頼ったぽいけど、もしお金を貸してもらえても、また同じことを繰り返すと思う。



富岡多恵子さんのエッセイは面白かった。

かなり影響を受けた。



艶容女舞衣

聴くまでは感じていなかったが、近頃河原の達引と本当によく似ている。

楽しんだのは、宗岸の
‡丸い頭の光さへ

最初は頭巾をかぶっているから、語っている千歳さんのことやん、ってクスッと。

※外見を笑ってはいけないことはわきまえている。
この状況に対してね。

で、‡この頭に免じて
でやっぱり笑ってしまう〜。


‡獄門の木
初めて見たので笑ってしまう。



太平記白石噺

よく聴いていたので、千秋楽こそは、清十郎さんの傾城宮城野をじっくり観ようと思う。



募金活動
初日から清十郎さんにお会いして、嬉しい驚き。

幕間、竹本住大夫さんがいらっしゃるのに、人がまばらだったのでサインをお願いした。

三輪さんがええ声だった。

終演後には吉田簑助さんがおのぶを遣われていたので本当に驚いた。

簑助さんじゃなかったら、よしよしとかしたかったけど、緊張して募金するのが精一杯。

第2部幕間、勘緑さんに感想をお伝えできた。

9日には住大夫さんにサインのお礼を言うことができた。

幕間には、まさかの傾城宮城野!!かわいかった〜。

最初勘緑さんしか見えていなかったので、勘緑さんへの質問を考えてから行った。

どじょうの籠にも募金をさせていただいた。

16日17日も募金箱へ。

太郎吉の写真ばっかり撮っている。


旧暦弥生十七日、虹始見。並木千枝